与次郎神社

与次郎神社

秋田県秋田市にある与次郎神社。
秋田初代藩主佐竹義宣を祀る「八幡秋田神社」隣に、ひっそりと隠れるように佇む稲荷神社です。

この神社には、1匹の狐の、少し悲しい伝説が残されています。

与次郎きつねの伝説

むかし、佐竹義宣が久保田へ移り住んで、しばらく経った頃、夢に年老いた狐が現れました。

そして、義宣が城を建ててから、自分の住処が無くなってしまったこと、他に行く当ても無く、困っていることを涙ながらに訴えます。

さらに、もしも自分のために、ほんの少しの土地を分けてくれたら、義宣のために命の限り尽くすと誓いました。

それを聞いた義宣は、夢に出てきてまで訴えるとは、よほど困っているのだろうと、老狐を哀れに思い、自分の城の隅に老狐が住む土地を用意させました。

それから間もなくしたある日、義宣の前に1人の若者が現れ、義宣に仕えたいと申し出ました。

聞けば、その若者はとても足が速く、江戸までの道なら僅か6日で往復できると言います。

そして、言葉通り若者は江戸までの道をたった6日で往復し、義宣を大変喜ばせました。

義宣は、その若者に「与次郎」と名付け、どこへ行くにも連れ歩き、大変可愛がりました。

ある日、与次郎の存在を良くは思わない家臣たちが集まり、あれは狐の仕業に違いない、化けの皮を剥がしてやろうぞ!と、与次郎を罠にかける相談を始めました。

それを知らない与次郎は、いつものように義宣に用事を頼まれ、急いで旅支度を整え、江戸への道を急ぎました。

道中、悪い企みを計画していた家臣たちが狐の好きな油揚げを使い、罠を仕掛けて待ち構えていました。

与次郎は、大切な義宣の用事の途中と思いつつも、つい美味しそうな匂いに釣られ、まんまと罠に嵌められ、あっけなく死んでしまいました。

それを知った義宣はとても悲しみ、与次郎が討たれた山形に社を作り、手厚く葬りました。

そして、山形に行った際には必ず、与次郎の社を訪れ、旅の安全を祈願したと言われています。

義宣の城後隣には、今も与次郎の社が佇み、主を無くした与次郎が祀られる神社がポツンと寂しげに、佇んでいます。